interview(3) - 1995



チャットで読者と語る、HOTWIREDお馴染みの企画。1995年8月に行われたもの。
どういうわけか、著書に関する話そっちのけでトンデモ本の話題に花が咲き、たいそうマニアックに盛り上がっている。




[ http://hotwired.lycos.com/talk/club/special/transcripts/10-16-04.womack.html ]

allynb:(ジョン)キャンベルが特集を組んだヒエロニムス・マシーンを覚えてますか?

覚えてますよ。キャンベルは擬似科学に弱いところがあったね。

lethem:ジョン・クルートは、SFがエセ科学に寄与することの方が、その逆よりも多いと言っていますが、どう思います?

そう思います。たくさんのクロスオーバーが、特に帯域幅の低い端の方に見られますよ。

raydavis:あなたが一番関心をもつのは、奇人たちですか、それとももっと「オフィシャル」なダメ科学のほうですか(1960年代の人類学・霊長類学にいた攻撃的な連中とか)?

奇人たちだね、概して。彼らのほうがはるかにクリエイティブです。ときどき注目に値する本物が出現するんだが、まあそうしょっちゅうというわけでもない。

raydavis:そうでしょうね――「ポピュラー・サイエンス」と「サイエンス・フィクション」というのは二卵性双生児みたいなもので、「ポピュラー・サイエンス」は奇人たちの出版の手段ですね。

むしろシャム双生児じみてくるね、あまりにも頻繁に。世紀の移り目のユートピア思想のことをとくに思い起こさせられますよ。

lethem:偉大な擬似科学者(ヴェリコフスキーとか、ウィルヘルム・ライヒとか)たちが「フィクション」に活動を限定して、単なる三流のSF作家になりさがるところは容易に想像できますね…ある種の「鉄の夢」効果というか。本当に偉大な人物は想像の素材を現実世界に求めるものですね。ハバートとストリーバーはキャリアの途中でそのことに気づいた、と…

そして大金をせしめたね。レイ・パーマーも忘れちゃいけないよ。

drdisco:正真正銘の、本当に頭のおかしい科学者というのはあなたの本の中ではあんまり元気がないですね。こういう連中を避けるというのはあなたが意識的に行っていることなんですか?

そうです。なるべく避けるようにしている――彼らを皮肉るのは難しいんです。

scamp:ジョン・マックについてはどうですか?C.D.B.ブライアンは?

ジョン・マックは極めて愚か、ブライアンは非常に鈍い、といったところかな。彼はいい書き手だけれど、たいした根拠もない事を信じすぎるきらいがある。私は、邪悪な存在が脳の中に住んでいて人に悪事を働かせているなんてことを思いついてしまうような手合いが好きなんですよ。

allynb:ペンローズは?

ペンローズ?いやいや、もっともっと(おかしな連中がいるよ)。

raydavis:ほんとにおかしな脳科学の連中といえば、量子の不確定性のなかに魂の存在を据えたヴァチカンの神経学者たちにぜひ注目して欲しいです。

私もあれは好きです。パースペクティブにかかわらず、しばしば宗教と科学との相関は気になるものを残してくれますね。私はイスラエルの失われた十部族が恐竜だったと言っている素敵な本を持ってますよ。

allynb:失われた十部族がブリテン人になったという証拠が大ピラミッドにきざまれてたりもしますね。

それに関する私のお気に入りは、ギリシャ神話と聖書とエジプトでの出来事はすべてスコットランドで起きたんだと言い張る Comyns Beaumont です。

raydavis:じゃあ恐竜は温血なだけじゃなくて、割礼もされてたんですね。

そうそう、割礼されてたんだよ。そのせいで滅びたんだね。

drdisco:あなたの本のなかでは、グノーシス的なテーマがつねに繰り返し浮上してきますね。なぜグノーシスなんですか?「秘められた知識による救済」ということがあなたにアピールするからですか?

raydavis:アメリカの原理主義にとっては、(ジャックの本の設定のように)キリスト思想が分解したときに進む方向としては妥当な線なんじゃないかな。悪魔と地獄がそのまま使えるし…。

グノーシス派は不当な扱いを受けていると、私は常々思っていたんです。アルビ派(12−13世紀に南フランスのアルビ地方に起こった反ローマ教会の団体)などは特にね。

eyebrown:科学が「エセ」になるには、「愚か」の要素がないといけないんですね?だから量子力学――光子がスリットでぼやけてうんたらかんたら――はエセじゃないと。愚かさが足りないわけですよね。

まさにその通り、エセには創造性のスパークが無いとね。

lethem:量子力学のいちばん「エセ」らしいところは、僕が思うに、際限のない擬人化ですね。詩人の物理学とか何とか。スピンに、チャームに、ストレンジネス。どうしようもなく人間精神の投影に依存するところとか。

原子は友達という感じだね、少なからず。

allynb:エセ科学のモチベーションは何だと思いますか?安心感?

私はそれは、人間の精神の働きが信じることの必要性と組み合わさったときに起きる奇跡なんだと思ってます。

mrzygote:ゆうべは何だかロクでもない宇宙人解剖番組をTVでやってましたよね?

うん、あれは確かにロクでもなかったね。

mrzygote:ですよね。ぼくはこのUFOを、SFの「伝承」的要素としてとらえることにも興味があるんですよ。ただ、対象とアーティストの間には、例えば、ギリシャ神話とギリシャの作家との間よりももっと大きな隔たりがあるんじゃないかと思うんですが。

どのくらいのSF作家がこの素材に興味をもってるのか、わからないね。どちらかといえば逃げ出してるんじゃないのかな。

scamp:50年代のUFO本と現代のとでは、どこが違っていますか?

50年代の本は、たとえば金星に海があったりしますよ。いまよりもずっと純真だね。埋め込みやら、生体解剖やら、そんなものは無しで。

allynb:ミステリー・サークルなんかについてはどう思われます?

まあでっちあげでしょう。そこらの人が知ってるようなことしか知らないが。

allynb:マンデルブロ集合の形のミステリー・サークルは面白かったですよね。

私もあれは特に独創的だったと思う。信者たちは何年も混乱していたね。

drdisco:異星人との遭遇話に文化的な相違というのはあるんですか?それとも世界中どこにいってもでかい眼をした宇宙猿ばっかりなんでしょうか?

すこしはバリエーションがあるけれど、あなたが考えるよりは少ないと思いますよ。このごろでは言うまでもなく、マーケティング戦略のおかげでリトルグレイ達が市場を独占してしまいました。

allynb:わたしはLGM(リトル・グリーン・メン)はHMO(保健維持機構)職員の回し者なんじゃないかと思ってますけどね。

UFOが政府の陰謀だと信じてる連中は、マスメディアがつかんでいるよりもたくさんいますよ。

allynb:それは民兵タイプの連中のこと?

そう、そのとおり。彼らはとても…独特な世界観を持ってますね。

allynb:わたしはブリンが書いた、UFOが邪悪なエルフだという話が好きなんです。

それは読んだことがないな。でも、今日alt.paranet.ufo(ニュースグループ)の投稿で、昨日の番組で解剖されていた間抜けなエイリアンは実はエルフだと言っているのを見ましたよ。

grifter:原理主義者のセクトで、とくにTVに出ているような連中で、UFOについて色々語っているところはありますか?それともいまだにそれは「我らは唯一の存在」という彼らのスタンスとは矛盾するんでしょうか?

原理の連中は50年代始めのころからからUFOと悪魔について語っているよ。

grifter:ああ、それじゃあれはエイリアンじゃないんですね。悪魔なんだ。

その通り。

raydavis:UFOマニアが確固たる基盤を築くために台頭を初めて以来、彼らはライバルなんですよね。

mrzygote:または天使ですか…エゼキエルの車輪だの何だの。

grifter:了解しました、ニューエイジ流の「エンジェル・ムーブメント」とエイリアンの連中が今後ぴったりかみ合っていくだろうという意見で一致しそうということで。もしすでにそうなってなければだけれど。

raydavis:いや、もうなってるって!

皆さんは多分、私の姉が天使とチャネリングしているというのはご存知ないでしょうね。私はしませんよ。

raydavis:「アウト・オブ・サイト、アウト・オブ・マインド」のほかに短編はありますか?どこで見られます?

絶版だけれど、ダトロウ編の「リトル・デス」を見てください。私の最良の作品が収録されています。自己性愛窒息と文学の脱構築がひとつになっています。

drdisco:あなたの作品に現れる天使(また違った意味のエイリアンですね)にはどういう意味があるんですか?あなたの作品を全部は読んでないんですが、僕が読んだうちのなかではいろんな形で背景に登場しています。

天使には天使の目的があるんですよ。

peske:SFはあなたにとって創作の枷ですか、助けですか?

allynb:終末のヴィジョンというものを持っていますか?あるいは遠未来のヴィジョンでも?

どうだろう。SFは枷でもあり助けでもあるかな。私の未来のヴィジョンというのはまあせいぜい年末あたりまでというところです。