伊達巻があれば、おせちはいらない。

伊達巻を食べていいのは正月だけだと、
多くの人が信じている。これは全くの誤解である。
伊達巻はいつ食べてもよいものだ。
だが、伊達巻が食べる時を選ばないことは、
伊達巻がハレの食物であることと矛盾しない。
いついかなる時でも、伊達巻のある食卓は
祝祭の食卓なのだ。

                   ――伊達巻マン

4年ぶりに伊達巻きページの更新です。更新をしない間も、伊達巻きは毎年買っていました。毎年、年末に7本から9本ほどを買っていました。ほんとうは10本以上買えれば幸せでした。なぜそんなに買うのかと問われると言葉につまりますが何しろ伊達巻を口一杯にほおばっていたので無理もありませんでした。伊達巻きが好きです。なぜそんなに好きなのかと問われると言葉につまりますがむしろなぜ他の人は伊達巻に関心が薄いのか、いつも心の底から不思議でした。伊達巻きはおいしいです。美味しいのですが、単に美味しいだけでなく、見た目が美しい。うずを巻いている。おいしい。などなど、たくさんの美点を備えた健康食品なのです。食べ過ぎるとメタボります。でも1シーズンに10本以内なら大丈夫です。大丈夫です。ご清聴ありがとうございました。倉田タカシ(イラストレーター・神奈川県在住)


伊達巻を年に一度の大人買い! WHY NOT?


写真:築地で購入の5点

2007年はトータル9本でした。ごちそうさまでした。

2007年の伊達巻・築地買い出し篇

2006年の暮れの買い出しは、初めて築地市場に行ってみました。
練り物天国! 伊達巻の聖地! と期待いっぱいでしたが、思ったより伊達巻を作っているお店は多くない、ということがわかりました。そっか……。 とはいえ、ここでしか買えないものを手に入れられたので、満足です。

 

佃三男(つくみを)高級伊達巻

たら使用
  • 甘さ:
  • だしの濃さ:
  • 卵の風味:
  • しっとり感:
  • ふんわり感:

袋のなかでだしにひたひたと漬かってました。そういうのが個人的に好きなんです。伊達巻きが泳いじゃってるぐらいのがいいです。
しっとり・ふんわり系で、卵の黄身の味が濃厚に感じられ、錦卵(の黄色いところ)にちかい舌触り。かなり濃いめの味付けで、甘味も強いけれど塩味もしっかりしてます。
今回買ったほかのに比べてお値段は安めなんだけど、とても好みの味でした。

 

さすぼし特製伊達巻

タラ・イトヨリ鯛使用
  • 甘さ:
  • だしの濃さ:
  • 卵の風味:
  • しっとり感:
  • ふんわり感:

佃三男の伊達巻が卵系なら、こちらは魚系。魚肉の風味がしっかりしています。
それから、断面がとても綺麗です。美しい伊達巻きの断面は、枝ぶりのいい松の木に通じるものがあります。

伊達巻を切らずに丸齧りしたい、という
若い情熱を私は微笑ましく思う。
しかし、
伊達巻はナルトやロールケーキと同様に
「断面の食物」であり、切り口の美しさを
愉しむものであると私は考える。


                   ――伊達巻マン

 

丸玉伊達巻

 
  • 甘さ:
  • だしの濃さ:
  • 卵の風味:
  • しっとり感:
  • ふんわり感:

目の前で焼いて、作りたてを売ってくれる伊達巻はここだけなんじゃないでしょうか。店先の棚でさましたのを、くるくると紙に巻いて渡してくれます。ちなみに巻き簾はなし。いきなり紙。屋台っぽい。
甘さよりも塩味の勝った味、そして、濃い出汁の風味。ほかの伊達巻がどれも薄味に感じられるほど、強い味でした。
巻きたてなので、下の部分がつぶれず、ほぼ丸いままの断面なのも印象的。そして、巻くときに鬼簾をつかわないので、伊達巻き特有のギザギザ模様もないのです。

 

丸高伊達巻

グチ・タラ・イトヨリ使用
  • 甘さ:
  • だしの濃さ:
  • 卵の風味:
  • しっとり感:
  • ふんわり感:

今回食べたなかでは一番お菓子にちかい味でした。しっかり焼き色のついた皮の香ばしさもお菓子っぽさに貢献。もうほとんど高級焼菓子。
魚の風味はほかに比べると控えめで、軽い味わいです。そして、卵の白身のほうの味がかなりはっきり感じられるのも他と違うところ。

 

ノンブランドゆず風味の伊達巻(細巻)

 
  • 甘さ:
  • だしの濃さ:
  • 卵の風味:
  • しっとり感:
  • ゆず感:

店頭で、ビニール包装のみで売られていました。「料理屋に卸した物の残り」とのこと。ゆずを練りこんであるそうです。いい香りでした。そしてこのかわいいサイズ。直径はふつうの伊達巻の六割くらい。
味はしっかり、歯ごたえもわりとしっかり。焼き色が濃いのと薄いのがあり、「どっちがいい?」とおばちゃんにきかれて濃い方を買ってきましたが、香ばしくて美味でした。
小さい分だけ、ぎゅっと味がつまっています。

伊達巻なんてどれも同じ味だろう、と考えることは
多くの文化からなるアフリカ大陸の料理を
ひとつの味と見なすことに等しい。
伊達巻はそれ自体が料理の1ジャンルであり、
その味には無限のバリエーションがある。
伊達巻を愛する者はみな
そのことをよく知っている。

                   ――伊達巻マン

多くの人にとって、伊達巻きもアフリカ料理も同じくらい遠い、それもまた現実。

2007年の伊達巻・その他篇

2006年末から2007年にかけて、築地以外の場所で買ったり食べたりしたものです。

 

生協の伊達巻(正しい商品名は不明)

 
  • 甘さ:
  • だしの濃さ:
  • 卵の風味:
  • しっとり感:
  • ふんわり感:

実家で食べてきました。生協のなので、メーカーがよくわかりません、というか、パッケージをすでに捨てられちゃってました。ふんわり、しっとりの卵系。数年前に食べたものよりもしっとり度が増していたような気がしますが、これでしか味わえない独特の上品なふわふわ感です。かなり好きなんです。

 

神茂伊達巻

 
  • 甘さ:
  • だしの濃さ:
  • 卵の風味:
  • しっとり感:
  • ふんわり感:

丸玉のとはまた別な意味で、魚寄り、かつ塩味強めの伊達巻。弾力があって、噛むとだしがじゅわっと出るタイプです。かまぼこ系です。

 

籠清柚子伊達巻

 
  • 甘さ:
  • だしの濃さ:
  • 卵の風味:
  • しっとり感:
  • ふんわり感:

クリスマスの少し前に買いました。買った時点ですでに賞味期限の直前で、ずいぶん中途半端な時期に売っているものだと思いましたが、袋をあけるとふわーっとゆずの香りがして、ひと足はやいお正月気分です。
かなりしっとりで、甘~い出汁巻き卵系。写真ではよくわかりませんが、みじん切りの柚子の皮が入っています。これがシャリシャリした歯触りで、生地のしっとり感に馴染みつつ、いいアクセントになっていました。風味も充分。

 

つくごん(佃権)ミニ伊達巻

 
  • 甘さ:
  • だしの濃さ:
  • 卵の風味:
  • しっとり感:
  • どっしり感:

こちらも上記の柚子伊達巻と同じ時期に買いました。パックの中にちっちゃいのが3本ならんでいました。切ってみるとごらんの通り、グルグルグルグルとすごい巻きっぷり。いままでに買った伊達巻きのなかでいちばん巻いてます。
どっしり味なつくごんの通常のものよりも、さらにごっちり・みっちりと詰まった生地。かなりカステラ風の伊達巻でした。よく焼けた皮もカステラ風の香ばしさ。

伊達巻にすべてをかける男達

左:伊達巻マン モーガン・ロバートソン
「『伊達巻好きに悪人はいない』というのはただの幻想だ…だが、伊達巻を食べている間だけは、誰でも善人になれる」
ときどき刑務所の慰問に訪れる伊達巻マン。受刑者たちは正月が来たかのように熱狂すると本人は語るが、真偽は不明。
右:だしおじさん (本名不明)
伊達巻好きが高じてついには社会の規範を逸脱し、数奇な人生の果てに伊達巻マンのエンジニアとしての職を得るに至る。
「伊達巻がなかったらネ、ボクは犯罪者になってたと思うのネ」と語るが、すでに6回の投獄経験あり。
 

気になったけど買わなかった篇 @ 築地市場

2006年の暮れに、築地で、買いませんでした。

味の浜藤
チーズ入り伊達巻・クランベリー入り伊達巻

[*買いませんでした]
気になりました。これはほんとに気になりました。この高級感あふれる色物っぷりは一体どういうことですか。
浜藤は、ノーマルなやつを一度買ったことがあるんですが、美味しかったんです。これも、思いつき一発じゃなくて、きちんと手堅い開発プロセスを踏んで、何十回もの試食を経て、満を持して商品化されたものなのではないか、「チーズおかき」とか「めんたいフランス」みたいに新たなスタンダードになるべき組み合わせなのではないか、と非常にぐるぐるしましたが(そもそもこの年に初めて出た商品なのかどうかもよくわからないんですが)、結局、予算の壁に阻まれて、購入を断念。2007年末、もしまた売ってたら買うかも。

伊達巻きのために、いま、ぼくたちができること

買ってください。何本でも買ってください。おねがいします。
買わせてください(自分の妻に懇願)。何本も買わせてください。おねがいします。

2007年のまとめ

はじめて築地に買いにゆきましたが、なかなかの収穫でした。しかし実は一番の目玉を買いそこねてしまったのです。行った時刻が遅かったので、すでに長蛇の列ができていた某店の伊達巻きは買えませんでした。今年末、また築地に行こうと思います。

毎年、まだ食べたことのないものを買うようにしていますが、何度でも食べたいお気に入りのメーカーがいくつかあって、ほんとは毎年それも買いたい、しかし予算は限られている(財布の紐はもちろん妻が握っています)、と葛藤するのです。

2003年のレビューはこちらからどうぞ。2004-2006年分についても後ほど更新の予定です。