"伊達巻のない人生とは
空気のない惑星のようなものだ" |
冗談では済まされない程度に伊達巻が好きです。健康に支障のない範囲で伊達巻が好きです。伊達巻があるのでクリスマスよりも正月が好きです。涙ながらに伊達巻の保護をうったえます。伊達巻の着ぐるみがあったら着ます。伊達巻のためなら女房を質に入れません(こわいので)。あなたにとって伊達巻とは何かと訊かれただけで犬のように涎を垂れ流して引かれます。獄中で毎日伊達巻が出るならをてもいいです。このように伏せ字を伊達巻マークにするとなごみます(きい・拷室・戸越座)。
・手に持ってみて重いものを買う
・なるべく値段の高いものを買う
・使われている魚の種類で買う(たらよりも「ぐち」やひらめを使っているのが高級品)
・なるべくたくさん買う
・赤子が泣いても買う
・妻に脅されても買う
・店員を脅してでも買う
・飢えた子供たちに思いをはせつつもやっぱり買う
・正月にしか買えないことをむしろ感謝しつつ買う
・食べきれないかも知れないなどと心配せずに買う(食べきれるので)
マーク付けはもちろん主観に基づくものですので、個人的な好みが大いに入っています。あしからずご了承ください。本当のことを言えば単に伊達巻マークを並べてみたかっただけです。
小田原・鈴廣の「伊達巻」 | ||||||||||||
「高価いものほど美味い」とされる伊達巻ピラミッド、その頂上付近に堂々君臨する高級商品がこのひと品。わりと塩味が強く、だしも濃く、どちらかといえばだし巻き卵に近い味。そのせいか、毎年買って美味しいとは思いながらも、なんとなく騙されたような気分になるのでした。 | ギザギザが浅いのが、よくわからないけど粋な感じ。巻きもゆるめで、箸でつまむと「へろり」とほどけます。 |
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川雄の「ゆず伊達巻」 | ||||||||||||
色物かと思いきや、意外によかったゆず風味。柚子の皮のみじん切りが生地にどっさり入っていて、お正月気分満載です。口当たりがちょっとごそごそするのはご愛敬。 | ゆずが目にあざやか。真ん中の模様が梅の木のようで綺麗です。絵になります。 |
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小田原・籠清の「祝膳伊達巻」 | ||||||||||||
これもだし巻卵系の味。鈴廣のによく似ていますが、塩味はもっと薄くて、さっぱりした感じ。これも大変しっとり系で、ぞうきんのように絞ったらきっとジャバーっとだしが出ます。あ、いや、そんな非道いことは考えてもいけません。 | 写真からしっとり感が伝わるでしょうか。ビニール包装のなかでだしにひたひたと浸ってました。 |
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佃権の「だてまき」 | ||||||||||||
「昔ながらの味」が売りの一品。食感はもったり、どっしり、そしてべったり。味はかなり濃く、素朴というか大雑把な風味です。煮干しの尻尾のような香ばしい魚の風味が後味に残るのがなかなか魅力的。縄文人のような伊達巻きです。 | ご覧のとおりのボッテリ具合。真ん中のしわがほとんどありません。絶滅した古代の巨獣のような姿。 |
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いちまさの「ヨード卵光100%使用伊達巻」 | ||||||||||||
「ヨード卵光使用だって、アハハハ(笑)」買ってみたらば……う、美味い! 伊達巻であるかどうかというのを越えて、ただもうおいしいです。だしは薄く、お菓子に近い味。口の中に卵の風味がふわーっと広がって、やばいほどの至福を覚えます。これはあなどれなかった。来年はロングサイズを希望します。 | 写真だとわかりませんが、色もほかのに較べて黄色味が強いのです。ヨードの威力です(多分)。 |
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マルス栗伊達巻き | ||||||||||||
栗がどんな風に入ってるのか、興味津々で買いました。…なるほど、ど真ん中にごろごろと。これまたお菓子に近い味で、真ん中の栗の甘露煮がじつにいい取り合わせ。栗きんとんと伊達巻を一緒に食べているような、盆と正月が一緒のような、そんな幸せ。 | 種のいちばん端っこに栗を焼き込んで、それを巻いてあるんですね。見た目はなにやら海にいる不思議な生物のような。 |
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杉与の「寿おせち 伊達巻 上」 | ||||||||||||
ごそごそします。食感が。噛むとじゅわっとだしが出て、高野豆腐みたいな感じもちょっとあり。さすがに今回一番安かっただけはあります。でも、この「じゅわっ」というのがけっこう美味しいです。同じメーカーのもっと高級なのも試してみたいところ。 | ほとんどまん丸な断面に要注目。自重でつぶれるほどの密度を有していないことがわかります。それはよくないことです。 |
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つきじ入船の「上印伊達巻」 | ||||||||||||
CMソングが頭に浮かぶ、お馴染みの江戸の味。まあなんというか非常にスタンダードな伊達巻で、しっかりした食感があって、輪郭のはっきりした味とともに、伊達巻の王道という印象。スタジアムで10万人動員できそうなポピュラー感があります。 | 色の濃さからも主張の強さを伺わせます。声の大きい者が勝つという真理は伊達巻においても例外ではないのでした。 |
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つきじ入船の「極上伊達巻」 | ||||||||||||
もう一種類買いました。年が明けたら半額でした。こちらは高級バージョン。…あっ、全然ちがう。そもそも色からしても濃いですが、中身も濃いです。つくごんのものに近いようなギッチリ感。あちらよりも上品な味。 | 上の「上印」よりもしっとりなのがおわかりいただけるでしょう。 |
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co-opの伊達巻 | ||||||||||||
実家で食べてきました。毎年これを買ってるようです。かる〜〜くて、ふわ〜〜〜っとしてます。上品な薄味、生麩にもちょっと似た食感。伊達巻?そんな海の向こうの話なんて知らない、とでも言いだしそうな、八頭身モデルじみたよそよそしい高級感。これはこれでアリです。 | 色の薄さとともに、不思議と角張った断面の形も印象的。 |
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このページを作るにあたって、同じ様なことをやっているところがないかと検索してみたところ、こちらの「伊達巻選手権」を見つけました。
http://www19.cds.ne.jp/~c-kujira/datemaki.html
充実した、とても素晴らしいページです。同好の士がいるのを知って大いに勇気づけられたのは言うまでもありません。そして、いろいろの比較検証の結果「どの伊達巻きもうまい」と書かれているのを見て、失礼ながら「なるほど、これが伊達巻好きの末路か」としみじみと思いました。
当ページとしても、10種類の伊達巻を食べくらべた結論を記しておこうと思います。
どれもおいしいです。
伊達巻はどれもまったくおいしいです。伊達巻であるというだけで善です。この世にわるい伊達巻なんていない。つまり熱血教師が卒業式で生徒に向かって「おれはお前たちが大好きだ!」と叫ぶような感じです。いや、そうでもないです。おいしかった。
また来年お会いしましょう。さようなら。