我が家の秋刀魚まつり

今日、麩の味噌汁!」

 
今日、耳、日曜!」  
今日が駄目でも、いいTOMORROW!!」 常套句と戯れる間に連休は風のように飛び去り、 キンモクセイの香りもすっかりあせて、 なのにわが部屋の古本屋臭ときた日にゃもう、 まっさかり!いまがたけなわ!古本まつり! これってもう消えないのかなあ。 窓あけて風を通すと寒いし。 閉めると古本屋だし。 本が捨てられなくて引っ越しも難儀だったし。 そうだ、もう古本ばかり買うのはよそう。 堅く誓った読書の秋。 誓いはあっという間に破られ… さて、我が家の秋刀魚まつりなのですが、 9月の中旬ごろがそのピークであったと記録には 残っています。 では当時の献立を振り返ってみましょう。  
時間帯献立
さんま(刺身)
さんま(焼き)
チキンライス
オムライス
さんま(焼き)
オムライス
オムライス
さんま(刺身)
オムライス
 
 
(問)空欄を埋めなさい。 「うーんうーん」 「おや、うなされているのかな?」 「オムライスが、オムライスがうーん」 彼の悪夢のなかでは今まさに巨大なオムライスが 街をみるみる蹂躙しながら巨大な軟体動物のように 交差点では手を挙げて渡りながらもおまわりさんには 芯の残るご飯つぶをまぶたのうらに押し込むなどの 嫌がらせにも余念なくケチャップはふたのまわりに こびりついて固まるとプラスチックじみた質感を おびて食欲をほんのすこし、ほんのすこしだけ 減退させることによってマイナスの調味料としての 価値を獲得するに至ったのである。 「おむっ、おむっ(白目をむくのは意外に大変)」 「中島らもの『超老伝』を思い出すね」 飽きました。 ああ飽きました。 オムライスに。 米3合分のチキンライスを作り置きして 卵で包んでケチャップで食う! 卵で包んでケチャップで食う! 卵で包んでケチャップで食う! 卵で包んでケチャップで食う! 卵で包んで「うわあ飽きたぁー」 引っ越して早々の同居人の長期旅行が倉田さんを とどめようもなく「独身男さんの手抜き料理」の 懐かしいマニエリスムの世界へと退行させ、 っていうか、 いや、もういいんだ。 オムライスのことは忘れるんだ。 僕は秋刀魚について語りたかったんだ。 * さんまはおいしい * 特に刺身が。 特に刺身が!! このだらしのない脂の乗りっぷりが、もう。 一緒にさばいたアジの方がはるかに身が締まって いたとしても、まったく勝ち目がありません。 秋刀魚の圧勝です! 「うまいです!うまいですわープツッ(通信途絶)」 みたいなうまさが脳を直撃ですよ!わー!! 残念なのは、刺身にできるくらい新鮮な秋刀魚が なかなか出回ってないことですね。 近所に魚河岸があったなら。 されどここは練馬区、海なし区。 おおきくなったらさかなやさんになりたいです。 そう、身長5mくらいに育ったら。 電信柱を竿にして。 マッコウクジラを釣りにゆこう。 (↑魚屋さんというよりは漁師だと思います)


(つづく)


 

朝パース


♪いつものように徹夜あけ

(↑ちあきなおみ風に)



バイト帰りの朝帰り。


徹夜あけに外を歩くとですね、街の景色がですね、


なんかこう、すんごい、パースペクティブが。


都市のパースペクティブがすごいんですよ!!


なんていうかもうグワーって感じなんですよ。
遠くの方からこっちに向かって、もう、奥行きが
ウオーみたいな感じで、なんかすごい、
せまってきますね!迫ってきますよ!パースで!


なんでこんなに立体的なんですか?
4点透視図法ですか?
それは、えー、つまり四次元? ん?
いわゆるひとつの徹夜マジック?


♪ふーしーぎーだ〜(不思議だー)

♪すてーきーだ〜(素敵ー)


もうすっかり脳味噌がアンマウントされちゃってる
倉田さんは普段の5割増しぐらい馬鹿でした。



「早朝で街に人がおらんからなのじゃあー」

「うわーそうなのかあー(始発で爆睡)」



そうなんですね。

人がぜんぜん歩いてないから、消失点方向から
延びてくる道路やビルの直線がさえぎられずに
まっすぐ見えて、とてもとても立体的なんですね。
そうかそうか、そうなのか(安らかにヨダレ面)。

(完)


そんな出来事があったのも早や2週間まえのことと
思えば、つくづく時間とは恐ろしいものですね。
時間を止めるリモコンが欲しかった。

むしろ自分の時間だけはしょっちゅう一時停止の
スイッチが入ってしまう、世界は勝手に先に進んで
いってしまう、これは一体どういうことなのかと
いえばもちろん、寝ているからなんですね!
深夜とか特に!
どうりで午前4時頃の記憶が無いと‥‥
いや、あるぞ?あれっ?なんかモニター眺めてたぞ?

(ガンジス河の水のように混濁した意識が答えを
求めて無方向に波立つこと小一時間)

(うやむやのうちに就寝)

(無方向な手足の動き ←うなされている様子)


そんな無目的なひとり寸劇はさておき、次回の作文は
「我が家の秋刀魚まつり」という題になるのでは
ないかと思われます。

ええ。まつっていました。 かなり。



(つづく)


 

ひっこしていました


台風一過の日暮れ時、
買い物がてら街を歩けば
蚊取り線香と夕餉の香り。


都市計画の上塗りもほんのひと刷毛ばかりの旧市街、
おおらかに起伏する地表の上に、細い街路が陶器の
表面にある釉薬のひび割れのような踊る編み目の
模様をえがき、角を曲がるたびに目を奪う新しい
角度、新しい構図、どこまで歩いても街には次の
顔があり、並ぶ家々もまた古くも新しくも不思議に
個性的で、深い紺色に沈んでゆく空の前にその輪郭を
楽しげに立ち上がらせているのでした。




今年の夏は、引っ越しでした。
引っ越しが今年の夏でした。
笑っちゃうくらい、そればっかりでした。

炎天下での家探し。
猛暑の中での大移動。

 
夏を満喫!  
満喫脱水!(←ちょっと麻雀っぽい) 酔っぱらって噴水に飛び込んだ人みたいにずぶ濡れの 汗だくな段ボール箱リレーを自分の分と同居人のと 都合2日間、巣穴に獲物を運ぶアリンコのような ひたむきな無様さでどうにか切り抜けて、一息ついて みればあら不思議、そこはまだ練馬区だったと いうのです。 「あれっ?」 練馬 → 練馬。  
郷土愛!! 前に住んでたところから車でたった10分の 場所に、はい、引っ越しまして、けれどもこの辺は 今まであまり馴染みのなかった界隈、散歩がとても 楽しいです。 そして気が付けば、そこかしこに忍びよる秋の気配。 ああ‥‥花火見そこねた。


(つづく)

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