緊急避難リスト(音楽ディスク編)

地震で屋根が落ちてくるとき、お家に爆弾が降りそそいでいるとき、
これだけは絶対に持って逃げる、
そんなリストを作成しておけば、いざという時に荷物が多すぎて逃げ遅れること請け合い。
作りましょう。そしてあなたも逃げ遅れましょう。


これだけは絶対に置いて行けないもの


tal「ゆるいループはいりませんか?だらしないループ、脱臼感にあふれたループ、どこかハトの鳴き声を思わせる、単調で呑気でちょっとリズムの余ったループはいりませんか?」
そういうものを欲しがる人は極めて少数なので、彼のCDはきっと売れなかったことでしょう。サイトで試聴してひと耳惚れ、ネット経由でふた月も待ってようやく届いた3日後に新宿のディスクユニオンで中古盤が600円で売られているのを見つけました。でも後悔はありません。
an evening with charlie
yelloスイス出身の変なおっさん2人組。テクノロジー満載の実験ポップスにラテン暗黒街風味を投入して、よくわからないオリジナリティが発生したのが80年代初頭。聴けば呆然として笑います。ヴォーカルをとるのは芸術家を自称する貴族のドラ息子で、俳優としてヴォーカリストの役を演じているのだとうそぶく始末。えせラテン、えせアフロ、えせレゲエ。おっさんヴォイスと電子音。高校生のときにうっかり出会ってしまいました。
(all disks)
fila brazilliaしばしば京懐石料理に喩えられるその「うす味」っぷりで、一部の愛好家に深く愛好されていたテクノ隠者。音色やリズムが地味ながら非常にツボを押さえるところがあって、飽きずに何度も聴けます。アルバム名や曲名にイギリス人だけに解るたぐいのギャグが満載らしいのですが、例えばグリーナウェイの映画をひねったらしき「a Zed and two L's」という曲名のどこが面白いのか、ご存知の方は教えてください。京懐石に云々はもちろんウソです。 近作ではなにやらバナナの皮で滑って転ぶみたいなヘッポコ感が強く出ていて、悪くはないけれどちょっと残念。
(all disks)
soul coughing生ベース、生ドラム、サンプラーにギターのNYバンド。いい湯加減のヴォーカルを筆頭に、すべてのパートが音楽の重要なエレメントの一つである「酩酊感」の醸成に奉仕した結果、むしろ「へべれけ感」とでも言うべきものが生まれてしまった、とはよくある話。ところで1枚目のアルバムは「飛行機を クライスラービルに 突っ込ましたれや〜 鉛筆みたいに へし折ったれや〜」みたいな曲で始まるので、廃盤になっちゃってないかどうか心配です。
(all disks)
zapp/rogerピコピコ音とファンキーが同じものだと見抜いたアフリカ起源のアメリカの人たちがレンズのところが星型になってる眼鏡をかけたりするのに大忙しだった時代の、「電子ヴォイスってファンキー」派の総元締め。ギンギラスーツで口にはチューブ(ヴォイス機械の入力用)という素敵な演奏スタイルで楽しませてくれたロジャーさんもいまはこの世になく、かれの死と前後するように巷には電子ヴォイスの曲があふれだしました。
(all disks)
the magnetic fields本家イギリスから10年も遅れてアメリカの地に発生したエレポップ風チープ音楽。サンプル・ループに安シンセ。エスケーピズムと資本主義。 基本的にワンマン・バンドながら、女性ヴォーカルを配して幻想的なポップスの初期時代、そのヴォーカルに(多分)逃げられ仕方なくひとりでボソボソと歌う引きこもり時代(音楽的には一番アイデア豊富)、気のいい仲間たちを得て和気あいあいとバンド人生を謳歌する現在、と3つの時期を経ています。近頃は幸せそうでなによりです。(>> 勝手にやってる歌詞翻訳ページ
(all disks)
zap mamaアフリカ風リズムのアカペラバンド。「っとぅくどぅん」とか「う゛らかかっ」とか「ほぅっ・ほぅっ」とか、たまには言葉で歌ってあげてもいいわよ、ぐらいの非言語っぷりで恍惚境へ一直線のファースト・アルバムが特にお勧め。不満と言えば曲の短さだけ。1曲に20分はかけていただかないと!
(1st & 2nd)
scritti polittiギコギコ音とキラキラ音が隙間もなくスムースにつなぎ合わされて、見事な音の箱根細工。ロジャーやマイルス・デイヴィス客演でファンク風味、レゲエ風味な

白人インテリ音楽。ながく聞き続けてます。
provision
坂本龍一初期のサンプリング音楽の傑作。アート・オブ・ノイズあたりは時の経過とともにいささか色褪せてしまいましたが、このアルバムはいまも輝いています。蓋を開ければたちのぼる、前衛アートのミステリアスな薫り。いまだに騙されてます。
エスペラント
solid docterフィラ・ブラジリアの片割れによる別プロジェクトは、夢の中で誰もいない街を延々歩くときのBGM。現実での深夜の散歩にも。どこまでも心地よい寂寥感と離人感、音楽誌いわく「人嫌いの音楽」。
(all disks)

これも置いていくにはしのびないもの


jimmy caster bunch「ワシ原始人!ワシ原始人!女どこや女どこや女どこや女どこや」ブラックの人はつねに未来を夢見ているものと信じこんでいた我が後頭部に叩きつけられる特大サイズの石斧。「ヘイ!リローイ!おめえの父ちゃんギャーッハッハッハッ」などなど、チープでファニーな野卑ファンク。
best
dummy run安いサンプル音がグシャグシャに高速回転して曲らしきものを形作りかけた途端にプツリと切れるという、いわゆる「『1〜3分程度の曲ばかり数十曲』系窃盗音楽」方面における最良の一枚。 あります。そういうジャンルがたしかにあります。
pink rocket
dummy run幼稚園の運動会のBGMとしても充分に機能すること間違いなしの可愛らしいメロディを満載した、低音質・安サンプルなチャカチャカ高速音楽。聴けば自然と、短い脚をちょこまかと動かして周回遅れのあげくにすっ転ぶ愛児の姿がまなうらに浮かび上がってくることでしょう。
chocolate headache
animals on wheels貧乏ゆすり音楽としてのdrum'n'bassのひとつの完成形。狙いすませた急所にほんのひとスネアだけ余分に投入、グルーヴをこっぱみじんに破壊する至芸。非常に優れたリラクゼーション効果。
designs and mistakes
plug締め切り音楽。ひたすら一定のテンションを保ったまま、いい湯加減の切迫感で煽り立てるチャカチャカしたリズムが最後の追い込みに非常にマッチ。一時期とても重宝しました。
drum 'n' bass for papa
visit venusニセB級SF映画サントラ風ブレイクビーツ。宇宙旅行がコンセプト。ホワイトノイズみたいに響くスネアと深い音響で、心地よい浮遊感。「first man on the moog」「one passenger lost」と、曲名もとてもいい感じ。
space tourism vol.1
sluts 'n' strings & 909電子音と電子ヴォイスが耳元で「ほら!80年代だよ!目を覚まして! あ、いや間違えた!寝ろ!」「えっ?何?どっち?」 シンセと生と、どっちのベースにする?と訊かれて選べずに泣いてしまった少年時代のニセ記憶。
carrela
moloko電子音・民族音・ねじれヴォーカルにつんのめりリズム、という満腹音楽。黒人のひとがよくやる電気ファンクのテイストをふんだんに盛り込んでいて、むしろやりすぎなんじゃないかというほどで、時に胸焼けを覚えることも。
do you like my tight sweater ?
nightmares on waxHIP−HOP好きのイギリス人。テクノで真似をしてみたところ、とても気持ちのいい曲が出来ました。決め手はやはり奇妙な電子音。
a word of science
adamski中古機材でループでライブ。合成ハンズクラップ音などが10年経ってもまだ気持ちよかったのでどうしようかと思いました(談)
liveandirect
想い出波止場エエカゲン音楽の金字塔。本人による、まったく意味不明の文章としか思えない曲解説が、聴いてみると間違いなく曲の内容の的確な説明であると判った瞬間のめくるめく脱力感。「折れた〜 リップぅ〜クリームで〜 描〜〜〜いた〜〜 土っ星ぇぇぇ〜の輪〜〜〜(歌詞より)」
金星
smoke city海の底にもブラジルが!? エコーとともにボサノヴァが? 南半球にある竜宮城で鳴ってる音楽はきっとダブ、という学説の信奉者たちへのまたとない福音。けだるい色っぽさがなんとも竜宮城。
flying away
up, bustle and out世界中を旅行してフィールドレコーディング。特に南米を重点的に回った結果、とてもラテン風味に。酒場で出会った酔っぱらいミュージシャンの歌をそのまま収録したり、ライヴ感満点の素敵なアルバム。タイコもてんこ盛り。
one colour just reflects another
the irresistible force「ずっとホワ〜ンと鳴ってるのでそのままホワ〜ンとなっててください」「はーい(ホワ〜ン)」系の酩酊音楽。ホワ〜ンとなるほかにもヴオンヴオン反響したりピュイーンと飛んだりで、たくさんの至福があなたの脳を訪れることでしょう。
it's tommorow already
doctor rockit日常音サンプリング音楽の近頃の筆頭。やはり水音を使われると弱い、とか言ってる人向け。お茶目な中に真摯なメッセージなども含まれて、100人中60人くらいは認めてくれそうなくらいに音楽的。しみじみします。
indoor fireworks
herbertマシュー・ハーバートというのは上記ドクター・ロキットさんの本名。ライブでは、コンシューマリズムへの警鐘としてマクドナルドのハンバーガーを潰し、その音を採集して即興で曲にしたりもする奇人。しかしこのアルバムではあふれんばかりの叙情性でもってあなたをなんだかどうにかします。メロディがちょっと弱いのは、まあご愛敬ということで。
bodily functions
smack dab疲れきってるからなんとなく声もやさしくなってしまう、ホントはダルいだけなんだけど、そんな感じの声で歌う10歳児ふう成人女性。ぜんぶの曲の歌詞を手描きでぎっちり書き込んだCD盤面も、どっかいっちゃってるジャケのイラストも、大変キュート。(というか、ジャケは本当にいっちゃってる人だったらしいWooden Thomasというアーティストによるものでした)
majestic root
jonおみずある〜・よ」犬が日本語で歌います。 えっ、犬が日本語で? よかった!日本に生まれてきて本当によかった!!「あの、大丈夫ですか?」 しかもその正体が実は犬の着ぐるみを着た日本人女性だと聞いた日にはもう、「あの、大丈夫なんですか、その人は?」 たぶん大丈夫なのではないかと思います。
jon
melt-banana日本が世界に誇る、超高速前のめりバンド。何のコアかはよく知らないが、とにかくコア。 叫ぶヴォーカル。高速ドラム。ギターじゃない音をたくさん出すギター。そこにちょっとピコピコ跳ねるような軽快さが加わったこのアルバムが、個人的にはいちばん好きです。
teeny shiny
betty booマンガHIPHOP。ブリキのオモチャみたいなブレイクビーツにのっかって、ブー姐さんがまくしたてます。とても楽しいです。
boomania
pop will eat itselfロック風味の白人ラップに愉快なサンプル、突然チチョリーナを熱烈に賛美。デザイナーズ・リパブリックによるジャケも非常に有名かつ古典。カタカナででっかく「アロアPOPと読んで欲しいらしい)」。
cure for sanity
milli vanilliグループ名が欧米じゅうで「口パク」の代名詞だったのも今は昔、歌っているのは別人であることを暴露されたデュオの片割れは失意のうちにアル中死。そんな彼らのこのリミックス盤を10代の耳に刷り込まれた僕は、中古CD屋を何年も渡り歩きました。いったい誰の手柄なのか、心躍る素敵なポップス。
all or nothing (the U.S. remix album)
bassomatic白人の人による「ぼくが考えたファンキー」風味が、アジアの僕の黄色い耳にとても心地よく、「いいよね」「ファンキーっていいよね」…そして「ブレードランナー」からのサンプリング。
science and melody
mark stewart and the maffia穴だらけの音楽って楽しい!」という条件付けを決定的に刷り込んでくれた、数々の英国労働者階級産やぶれかぶれ音楽のうちの一枚。「廃墟でゲリラが銃撃戦」をそのまま音楽としてパッケージング。壊すことしか考えてないグチャグチャのmixがくりかえし聴くにつれ心地よい予定調和に落ち着いて、リラクゼーションに最適化。
learning to cope with cowerdice
ambicious loversアート・リンゼイ独特の「ギコギコいうギター」が大好きです。ノイジーなところとムーディーなところの配合の妙がすばらしく、おさまりの悪い歌詞も聴くほどに魅力に。
(all disks)
level 42もうだれも相手にしてくれない80年代フュージョン。ベースが薄いのがそんなにお嫌いですか? 裏声コーラスがきれいですよ? シンセが結構ファンキーですよ? 純朴な歌詞も微笑ましくて、いいです。
world machine (and some others)

入手がわりと困難なので置いて行きようのないもの


ヤマンタカアイ・大竹伸郎闇雲にガラクタを振り回して音を出し、それをつなぎ合わせて音楽だと言い張る、ポイントはやはりそのデタラメの徹底ぶり。聴けばもう何も作る気がしなくなる、魔のクリエイション。録音の様子をつづった大竹伸郎による付録のブックレットが、また破壊力満点。ヤマンタカアイこと山塚EYヨはボアダムスなどで有名なデタラメ音楽家/芸術家、大竹伸郎は世界でも有名なデタラメ芸術家/音楽家。
パイプライン
panasonicテレビを消したりするときに聞こえるような「プツッ」という小さな音。そんな音がただリズムを刻むだけ、本当にただそれだけ、それを音楽CDとして世界中に売り出したフィンランドの人たち。しかしこれが気持ちいいのでびっくり。最初のCDには日本の例の企業とまるまる同じ「panasonic」のロゴが入っていたが、訴訟を恐れてのちに「pan sonic」に改名。残念。
vakio

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