弥田くんからのメールを転載するページ

最終更新日:2006年11月9日


未だネットへの接続を果たせずにいる友人・弥田撤雄氏から、携帯メールとして送られてくる長文の映画エッセイ。
なんかもったいない」という気持ちから、本人の承諾を得てこれらを片っ端から載っけています。
開始からすでに5年。いまだに彼はネットの外の世界にいます。あいかわらずメールはケータイから指一本打ちです。くれぐれも誤解のないように申し上げておきますが架空の人物ではありません

…というコンセプトで細々とつづいてまいりましたこのページ、ついに最後の更新となりました。なる予定です。弥田くん、ついにプロバイダと契約し、インターネット開通となりました。 長かった…… 本当に長かった……
今後はご本人がどこかにブログを立ち上げることになるでしょう。弥田撤雄氏のこれからの活躍にご期待ください!



*随所にネタバレがありますのでご注意ください。

最新のメール:2005年完全私的映画ベスト10
 

2006/10/31

忘れてたやーい!2005年完全私的映画ベスト10!

〈洋画〉

  1. 復讐者に憐れみを…今ごろ公開、パク・チャヌク監督の復讐三部作一本目。「オールド・ボーイ」より上。そしてやっぱり、ソン・ガンホ最高。
  2. 巴里の恋愛協奏曲…まあー、これ以上無いってくらい軽やかで知性に溢れたミュージカル。前衛の権化だったアラン・レネ監督ですが、要するに誰よりも律儀にルネッサンスしちゃったんでしょう。
  3. ビフォア・サンセット…ひたすら会話劇。それだけでよくぞ、男女の友情を切なく描けたよね。成熟ってこうゆう事か。
  4. さよなら、さよならハリウッド…素直に笑えるので、ウディ・アレンのリセット成功。
  5. シンデレラマン…さすが、ほんまもんの乱暴者ラッセル・クロウ。テーマ云々よりも戦闘者の面構えに惚れた。
  6. 50回目のファーストキス…何故か記憶喪失ブームの映画界。ネタの奇抜さに振り回されない心が肝要やね。
  7. ミリオンダラー・ベイビー…深いなあー!でもえこひいきになりそうだから、この辺にしたよ。その上で敢えて付け加えるんだが、地球上に、イーストウッドより締め上手な監督はいない。
  8. 亀も空を飛ぶ…仁義なき子供映画が好き。戦禍に揉まれてどんな大人になるのやら。
  9. バットマン ビギンズ…監督といい主役といい、期待に応えるって素晴らしい。シリーズとして、うまいこと繋がって慶賀の至り。
  10. 大統領の理髪師…現代史をコメディに出来たら一人前。お隣さん(韓国)、なかなかやるじゃないか。
  11. 次点 チャーリーとチョコレート工場

〈邦画〉

  1. フライ,ダディ,フライ…「油断大敵」に続く成島出監督の第二作目で、伊丹十三、北野武レベルのデビューと言える。なんかその後いろいろあって完全に抹殺されたようですが健闘を祈る。
  2. 運命じゃない人…憎いね。脚本の上手さだけで評価されてしもうたから次が大変。
  3. タナカヒロシのすべて…遊んでるのに上滑ってなく、心に沁みる。のいるこいるも出てくる。監督は「モグラネグラ」のディレクターしてたらしいけど、本当に満を持したのでは。
  4. 亀は意外と速く泳ぐ…即物的だから下らなくて面白い。批判するにしても「TVのバラエティ並み」つうパターンはいい加減やめなさい。てのはもう一個の三木作品「イン・ザ・プール」の話でした。
  5. 埋もれ木…映画監督はある日ふと、ユートピアを撮りたくなるようで、幸い上手くいったから小栗康平の人生、勝ったも同然でしょう。
  6. いつか読書する日…緒方明ほど品のある作風は、過去にさかのぼっても希。上品過ぎてストーリー忘れちゃったよ。
  7. リンダリンダリンダ…例えば矢口史靖「ウォーターボーイズ」の域までは行かず、メジャーラインを半歩しか超えなかった山下淳弘。それもまた良し。ド美人・香椎由宇の女子高生ぶりが不思議にリアル。
  8. さよならCOLOR…中年男(竹中直人)の願望によって出来ている、心情的に大変スケベな恋愛映画。と言いつつ僕も、かくの如く姑息に死にたい。
  9. パッチギ!…頑固おやじだから風潮に逆らいたい訳ね。そうゆうひねくれ方も、アリはアリか。
  10. 東京ゾンビ…柔術+哀川翔で参った。テーマ曲かっこいい。
  11. 次点 痴漢男

バンバン書くって言ったのにこの始末。でも、家が燃えたりしたんだぜ? 救助されたぜ。きっと次回は、もうちょい早く、いやしかし。ちなみに、今回の見逃し映画は「疾走」「ある朝スウプは」「輝ける青春」「セルラー」「サマー・タイムマシン・ブルース」「ハッカビーズ」「自由恋愛」「愛についてのキンゼイ・レポート」ってとこか(痛恨順)。結構頑張ったと、虚空に胸を張っております。ただし、純然たるエンターテインメント作品が弱かったかもしれず、「ボーン・スプレマシー」を入れるべきだったような気も。まあランキングなんてそんなもんよね。かつて、あの傑作「ファイト・クラブ」を不明にも10位にした俺だし。ところで最近、インターネットを見始めましたよ。悪口雑言が飛び交ってて、恐ろしいところでした。くわばらくわばら、さようなら。

主演男優賞…山崎まさよし「8月のクリスマス」
クリント・イーストウッド「ミリオンダラー・ベイビー」
主演女優賞…柴咲コウ「メゾン・ド・ヒミコ」
ヘレン・ヘイズ「理想の女」
助演男優賞…金田龍之介「交渉人 真下正義」
助演女優賞…吹雪ジュン「タッチ」
      レネー・ゼルウィガー「シンデレラマン」

 

2006/01/04

ある日ふと、これからはガンガン書くぜい! と思ってしまったので、これからはガンガン書きます。ちょっと蔵出し的な感じもありますけども。

えーと

ティム・バートンの最新作「チャーリーとチョコレート工場」面白かったですよ。

周囲の他人達も非常に堪能してました。あらすじは簡単。貧乏ないい子が憎たらしい子らに混じり不思議な不思議な工場に招かれまして、クソガキ共はこっぴどい目に遭い、いい子は特別にいい思いをすると。どこがって訳じゃないですが「クリスマス・キャロル」みたいでした。ついでにちょっと屈折した工場のオーナーもいい子の影響下に置かれてめでたしめでたし。老若男女が納得できる方向性と言えるでしょう。

しかし。皆様と同じく、いやそれ以上に喜びながら、僕はずっと首を捻り続けていたのであった。この笑いを、どのくらいの人が共有できるとゆうのか?ティム・バートンは、ギャップを楽しんでるだけなんじゃないだろうか。だって工場内の出来事はほとんど話とつながり無いし。誰もが夢見るチョコレート工場の内部が散々勿体付けた挙げ句ひとつも工場らしくなく、ファンシーでクソガキ共の懲らしめ方も合理性皆無。

そして何故か、そこには常に歌と踊りが溢れてる、ってゆう「何故か」こそが重要なテーマに違い無いと、僕は思います。

そうゆう観点でいくと、この無内容さはリュック・ベッソンの変なSF「フィフス・エレメント」に大変近い。ただしあっちは作者の遊び心しか無くて苦痛だったけど、こっちは明確なストーリー展開で全客層をあまねく、まんまと取り込んでやがる。やりやがったな! と思ったら、ベッソンよりティム・バートン本人の「マーズ・アタック!」の方が似てるや。あれは好きと嫌いがびっくりするほど別れたね〜。その反省もあってこんなになったんでしょう。成長した! と、小泉首相風に締めても構わないですが、話はそう単純じゃない。

ここまで温存した本作品最大の謎は、工場のオーナーに扮するジョニー・デップの役作りが何故に、どう見てもマイケル・ジャクソンなのかって事です。つまりファンシーなチョコレート工場のモチーフはネバーランドか。孤独な天才への共感それとも提言? 興味深いと言えば物凄く興味深いながら、それ以上を考えるのは甘く危険な罠とゆうもんで、普通の人は普通に楽しめばいいと思います。映画ばっかし観てるとこうなるよ。気を付けよう。

 

Fri, 10 Jun 2005

こないだチャップリン映画祭ってゆうのに赴きましてですね、やっとですけど主だった作品は網羅出来た気がする(「のらくら」「巴里の女性」レベルまで)ので、たまには平凡な題材で能書き垂れるのも悪くないような今の気分。たまにはって我ながら怠け過ぎですけど、仕方ないんだもーん「モーターサイクル・ダイアリーズ」観たらベストテン作るもーん!

そんなグズ夫がグズなりに決め付けますと、完成度とゆう点で最高峰に位置するのは、結局のところ「モダン・タイムス」('38)でいいんじゃないかと思います。

「独裁者」('40)の時代性とか「殺人狂時代」('47)の毒、「ライムライト」('52)の感傷も捨て難いが、何よりもまず、チャップリンは面白い事をするチョビひげのおっさんだから

厳密に言うと彼は同時にテーマの人でもあるので、「モダン・タイムス」の思いっ切り露骨なメッセージ性が人により好き嫌いの別れるところでしょうけど、もうちょっと良く見ていただければ、文明批判とか小難しい主題を表現するために、チョビひげがいかに下らない演技をさらけ出しているか分かるはず。あのー、あれですよ、歯車に巻き込まれたり、レバーをいじりまくって迷惑をかけるやつ。当時でもまだ基本的にサイレントを守って無言で暴れ回ってますが、仮に台詞を付けたとしても「キャッキャッ」か「ワーイワーイ」としか言わせようが無い悪ふざけ。

もしこれが現代の京都・太秦で撮影されてたら、早速もう、ひっぱたきに行きますよ「馬鹿野郎!」と。でも突っ込み、いらねーんだよな、余りにボケが的確で。芸人としてのチャップリンを堪能すべく作られた大傑作と言っていいんじゃないでしょうか。ただしこの映画、リアルタイムで彼を追ってきたジャーナリズムのお歴々にはやや不評のご様子。いつもの芸をやっているだけらしい。ふーん。まあ、それ以前にドタバタ喜劇の決定版「黄金狂時代」('25)があるからなあ。

しかし、そっちはそっちで尊重するとして、画質がいいのは「モダン・タイムス」あたりからだし、作品としてスマート。おまけに今の感覚でいっても本作品のポーレット・ゴダードよりいい女は思い付かないため、初心者にはこっちが面白いよと、僕は主張したいところです。

ところがさあ、本題ですけど、そんなの「サーカス」('28)を観てしまうと霞むわけ。なんと21世紀の現在、これほど笑える映画があるかと言えば、皆無なわけよ。ちょっと前なら「メリーに首ったけ」くらいか。

ストーリーは、ストーリーってゆうか、チョビひげのおっさんがサーカスに入ってハチャメチャするだけ。そんなの今じゃMr.ビーンしかやんないけど、チャップリンには正直な話、あんな寒々しさなんか微塵も無いのが恐ろしい限りで、奴こそまさに、人を笑わせるために生まれてきたギャグ・マシーン、いやさコンピューターだぜ! と力みたくもなろうってもんです。いろんな映画でよく彼は、他人のケツを力一杯蹴っ飛ばして喜々としてますけども、大の大人がという感じをチョビひげや表情や、運動神経を使って完全に表現し、それだけで作品になっているさまを見れば誰でも、余人の及ぶべくもない域にその男が達していると理解していただけるに違い無く、「モダン・タイムス」が性に合ったら絶対に「サーカス」を観るべきだ! と断言して、この辺に致します。

あそこまでパフォーマーとして完成されてしまえば、別ジャンルと言っていいトーキーを敬遠したのは全く当然。そんな彼も「モダン・タイムス」で少し歌って「独裁者」でようやく喋り、ついにはチョビひげすら取り去って「ライムライト」の最後でまだやれるぜと、バスター・キートンを相方に激しく本領発揮し、やがてこの世を去るのでした。

余談ながら、カラー+トーキーってスタイルは、いまだに答えを見つけてないですね。ついつい過去に逃避しがちなわたくし。

 

Fri, 1 Jul 2005

MEGUMIに叱られた〜い! その感情にまさるとも劣らないくらい私的な、2004年私的ベスト10!

〈洋画〉

  1. ベルヴィル・ランデブー…フランス製アニメ。自由闊達な描線で歌や踊りが面白く、なおかつ映画としての完成度は異常に高い。日本の「ハウル」や「マインド・ゲーム」も本当はこうなりたかったんじゃないの? なんて思ったけど、あんまり詳しくないから、この辺で。
  2. エイプリルの七面鳥…母娘の確執? 不治の病? 即刻却下! と言いたいところだが、ちっとも暗くない、安易じゃないセンチメンタリズムだから好き。親不孝の象徴と言える黒人の彼氏がむしろ、映画の緊張を緩和して大成功。うまーい。
  3. モーターサイクル・ダイアリーズ…チェ・ゲバラの青春物語。力みがちな題材なのに、映像・音楽含めて最後まで一切やり過ぎ無し。慎み深く、まともな感性に貫かれてると言えましょう。
  4. スパイダーマン2…一作目を踏まえ更にレベルアップ。サム・ライミって、誠実な人だ。
  5. Mr.インクレディブル…日本のアニメが世界一ってのに、どうも納得いかない。誰か僕を説得してくれ。
  6. マスター・アンド・コマンダー…悲壮感とかご大層なテーマの無い、悠然たるテンポの歴史超大作。CG弓矢が雨あられと飛び交わないだけでも今時貴重。
  7. マッハ!…国分太一みたいな主人公のバランス感覚と無駄を省いた動きは、きっと実際、強いはず。画面の奥行や筋の運び方も問題無く「プロジェクトA」を超えた! と言いたい。
  8. 殺人の追憶…甘ったるい韓流スターは勘弁勘弁。何つったって、ソン・ガンホ。
  9. 戦争のはじめかた…看板に偽りあり。戦争映画じゃなくて、軍隊映画じゃねーか。まあ、なかなかひねりの効いたブラック・コメディだと思います。前半のノリを維持して欲しかったかな。
  10. ワイルド・レンジ最後の銃弾…JFKみたいな「13デイズ」、フィールド・オブ・ドリームスみたいな「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」と来て今回は「ダンス・ウィズ・ウルブス」とゆうよりも、クリント・イーストウッドみたいになりたい宣言。さまよい続けるケビン・コスナーの行く末に興味津々。

次点 ボン・ヴォヤージュ


〈邦画〉

  1. 隠し剣 鬼の爪…「たそがれ清兵衛」アカデミー賞ノミネートに対する、山田洋次の堂々たる回答にして、黒澤明なき後、初めて出来た完璧な時代劇。静と動のこの美しき交錯、かっこいー。
  2. 下妻物語…勝新が座頭市であるごとく、深田恭子のロリータぶりは天職と呼ぶにふさわしく、目に楽しい。「富豪刑事」も同じ。
  3. イノセンス…僕なんぞより詳しい人が沢山いると思うので、詳細は割愛します。絢爛たる画面ですね。
  4. 茶の味…石井克人がテンションに頼らなかった点を大いに評価したい。うんこと我獣院には頼ったけど。それはそうと土屋アンナ、「下妻」よりこっちの方が断然いい女。
  5. ゼブラーマン…ようやっと鑑賞に耐えうるヒーロー映画が出来たなあと、感慨もひとしおです。そしてゼブラナース。
  6. ふくろう…まったくもって、伊藤歩さまは眩いばかりに美しくあらせられるのに、何ゆえバンバン、お脱ぎあそばすのでしょうか。必然性ひとつも無いし、映画は毒々しいし。謎。素敵。
  7. ワイルド・フラワーズ…「MASK DE 41」「お父さんのバックドロップ」を遙かに超える、2004年プロレス映画の最高峰。プロレス部分を辛気くさいスローモーションでごまかしてないから、圧倒的に説得力が違う。
  8. 油断大敵…泥棒と刑事の、泥棒主導の友情物語、映画の愉悦。この監督、新人ですが間違い無く次代を担うでしょう。
  9. 父と暮らせば…井上ひさしの戯曲が原作だそうで、ほんとに何のひねりも無く戯曲っぽいながらも、舞台劇風な、非現実的ドぎつさを原爆の怖さに見事、転化出来ていると思うから一応評価。
  10. 誰も知らない…是枝直和だから相変わらず淡々としてますけど、今までと比べて、リアルじゃないといけないって縛りを抜け出した感じ。そんな中、今日も岡元夕紀子はマイナー映画で地道に働いてます。頑張って下さい。

次点 理由


俺は何故、人様の作品を勝手に採点しているのか? と、時折我に帰りつつ、結構いいのが揃ったんでは? 「バッドサンタ」「マッスルモンク」「ふたりにクギづけ」「チルソクの夏」「21グラム」「オアシス」「ヒッチハイク」「69」「モンスター」など、痛恨の見逃し映画もあるにはあるが(痛恨順)。何しろ、全然更新してない自分に反省しきりですよ。今年こそはって、もうすぐ夏か。何とかします。話は変わるけど、鈴木清順の「オペレッタ狸御殿」って、想像しただけでハラハラするね。多分観ません。そして頑張れ、貴乃花。

主演男優賞…岡田義徳「ワイルド・フラワーズ」
      チェ・ミンシク「オールド・ボーイ」
主演女優賞…榎本加奈子「犬猫」
      ダイアン・レイン「トスカーナの休日」
助演男優賞…北村一輝「ゴジラ FINAL WARS」ほか
助演女優賞…鈴木京香「ゼブラーマン」「血と骨」
      レニー・ゼルヴィガー「コールド・マウンテン」

TV部門特別賞…草野仁

 

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