倉田タカシ「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」

倉田タカシの短編集『あなたは月面に倒れている』所収のタイポグラフィ作品「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」の解説です。
(元は、河出書房新社刊の大森望責任編集・書き下ろし日本SFコレクション「NOVA2」に初出の際につくったページです)

これは何?

「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」は、閉じた平面のうえでテキストが曲線状に交差するという形式をもちいた作品の二つ目です。ひとつめは、2009年12月の文学フリマで販売した正20面体の立体紙工作小説「さがさないでください」です。

文学フリマの後、この紙工作小説の路線でしばらく製作を続けてみようと考えていたときにNOVA2へのオファーをいただき、「テキストが連続・交差する」という手法を文庫本のフォーマットにのせてSF作品としてみました。
どちらの作品も、Adobe Illustrator で作成しています。

どう読むの?

5つ続く見開き部分のテキストは、すべて繋がっています。
タテ方向は下端と次の見開きの上端が、ヨコ方向は右端と次の見開きの左端が連続します。これは、日本語の文字組み方向に上→下の縦書きと左→右の横書きの二種類があることを反映していないこともないかもしれないような気がします。(以下、図中のページ番号はNOVA2掲載時のものです)

作者がちょっと寸法の見積もりを誤ったせいで左右断ち切り部分のマージンがほとんど無いため、ただでさえややこしいヨコ方向がさらに読みづらくなってしまいましたが(すみません)、「こことここは繋がっているはず!」という確信をもってどうぞ読んでください。

文章が交差・分岐するところは、下のような形で読んでいただくことを想定しています。

どこから読み始めるかの決まりはありませんが、ひとつめの見開きの左上あたりから読んでいただくといいかもしれません。

これはSFなの?

SFです!

これは小説なの?

小説ではないかもしれません。