待てずに読んだ



 
のろのろと進む読書の記録

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#20030325

 ポール・ディ・フィリポRibofunk」。
 バイオテクノロジーの発達した未来が舞台の短編連作集です。90年代前半に発表された作品で、なにをいまさらのサイバーパンク、本当にド真ん中で直球のサイバーパンクなんですが、なかなか楽しいです。全体的にスタイルと勢い重視、こまかい考証にはこだわりません。もちろん造語もてんこ盛り。この文体が当時の基準に照らしても本当にクールなのかどうかは非ネイティブには判断不可能。男が「プラグ」で女は「ソケット」だそうです。バイオ犯罪を取り締まる「プロテイン・ポリス」というのもなんかよかった。ちなみに普通のおまわりさんは「ダーティ・ハリー」と呼ばれています(それはどうなのか)。
 韻を踏まずにはいられない「ヒップホップ・ヘッド」なる脳の障害を抱えた主人公が出てくる短篇が面白いです。ちょっと気を抜くと地の文で延々韻を踏んでしまうわけですが、それだけじゃなくてときどき歌詞カードみたいな感じでそれまでの展開を総括した四行詩(というかつまりヒップホップで言うところのライム)が挿入されるのが笑えます。「ラッパーみたいに読んでね!」ということらしいんですが、これがいまいちラップらしくないというか、ブレイクビーツに乗りづらそうな感じなのがなんとも味わい深いです。本当にファンキーな黒人が書いた、面白い(結局はここが重要)SF小説というのはないんでしょうか。まあ別になくても困らないんですけども。ディレイニーがちょっと近いくらいかな。EW&Fをモデルにしたっぽいスターが出たり。

#20030331

 ウィリアム・ギブスンPattern Recognition」。
 邦訳が出る前に読み終われるか、不安です。電車の中で読めない本のデカさがつらい。廉価版を待っても同じだったかも。
 現代の世界を舞台に、実在のブランド名やらなにやらが山ほど登場する小説だから、読みながらいろいろと検索するとイメージが広がって楽しいです。しかしこうなるともうハナっからすべての固有名詞にハイパーリンクがくっついていてほしくてしょうがない。
 検索できない、コピー&ペーストが面倒くさい、リンクで飛べない、一冊の大きさにほんとに一冊ぶんしか文字が入ってないなどなど、紙でできた本という形態の不便さがこのところ気になって仕方がないのですが、まだPDAの類は使ったことはありません(主に経済的な理由から)。ああ、はやく本がみんな電子になってくれないものか。
 つまり、世界のあらゆる知識と情報がひとかたまりの巨大な公共物としてどこからでも使用可能となり、すべての本はその巨塊に刺された個性的な形の吸い口のようなものであってほしい、繋がってない本なんてもう本じゃない、そんな気の早すぎる要望を持て余している今日この頃なのです。出来れば5年後くらいにはそうなっていて欲しいです。そして本が病気になったり。本に病気をうつされたり。本を交配させて人間を作ったり。そんな21世紀でお願いします(ぎじゅつしゃのひとへ)。

 「自分ひとりしか居ないはずの部屋で、ブラウザの履歴の先頭に行ったはずのないアドレスが加わっているのに気づき、背筋が凍る」という場面がちょっと素敵でした。携帯電話の普及し始めの頃に何やらしょうもないドラマで「電話の相手が実は真後ろに(バーン)!」という場面を見たときの新鮮な感覚を思い出し、「ああ、これがテクノスリラーというものか」と。即座に心の声が「それは違う」と。



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Akiary v.0.51